飛蚊症の治療について
病的飛蚊症の場合、その原因となる病変を見つけ出し、速やかに治療を行うことが重要になります。
また生理的飛蚊症の場合、トップページでもお伝えした通り、「経過観察」を進められる場合がほとんどで、有効な治療を行うには少々ハードルが高いのが現状です。
「生理的飛蚊症」への対応・治療としては現在、大別して以下の3つの方法が行われています。
経過観察
現在日本では、飛蚊症で眼科を受診して「生理的飛蚊症」と診断された場合、ほとんどの方がこの「経過観察」をすすめられるはずです。
経過観察は何もしないわけではなく、症状の進行や生活への影響を適宜観察しながら、何かあった時にはすぐに対応できるようにする、とても大切な処置ではあります。
しかし、大多数の方が、生活に支障が出るような状態であっても、何も改善のための処置をされていないのが現状です
経過観察のメリット
- 程度が軽度で生活に支障がない場合は、肉体的にも、経済的にも最も負担が少ない方法です。
- ほとんどの眼科で行われている対応ですので、近所の眼科で事足ります。
経過観察のデメリット
- 症状がひどくなったり、生活に支障が出始めても、改善や完治は見込めません。
レーザー治療による「改善」
YAGレーザーを利用して行う、レーザービトレオライシスなどが一般的です。
メスを使わないので、低侵襲性の痛みを伴わない治療です。
例えばビトレオライシスでは、ナノ秒パルスの低出力なレーザー光を照射して、硝子体のコラーゲンやヒアルロニン分子からなる濁りや浮遊物を蒸散(気化)させ、さらに硝子体索を切断します。
最終的に浮遊物が除去されるか、視界を妨げることのない大きさに縮小されます。
治療しているあいだに小さな黒い点や影が見えますが、それは濁りや浮遊物が細かな気泡へと気化されている状態で、これらの気泡は徐々に硝子体に吸収され、短時間で消滅します。
レーザーによる治療のメリット
- 眼球を切らずに行えるので、抵抗なく受けられる方が多いです。
- 治療は点眼麻酔で行うので、ほとんど痛みはありません。
- 1回あたりの所要時間は15~20分程度です。
- 入院の必要はありません。
- 高精度の機器を使うので、安心かつ安全です。(※ただしリスクが全くないわけではございません。)
レーザーによる治療のデメリット
- 「改善」が目的ですので、「完治」には至りません。
- 治療をおこなっている医療機関は(特に地方では)多くはありません。
- 一定期間が経つと、新たな飛蚊症が生じ、再度処置が必要になる場合があります。
- 自費診療のため、費用が高額になります。
硝子体手術による「完治」
現在、飛蚊症を「完治」させることが可能な唯一の治療法です。
浮遊物や濁り、剥離した硝子体などを取り除きます。
手術中は、眼球の形状を保つために灌流液(眼内の組成に近い人工的に調整した液体)を充填しながら行います。
元々は網膜剥離、糖尿病網膜症、黄斑円孔などの重篤な病気に行われる難易度の高い手術でしたが、現在では機器や技術の進歩により、 安全に手術ができるようになりました。ただし、現在でも飛蚊症の治療にこの硝子体手術を行う医師は全国でも稀で、生理的飛蚊症を完治するには、大きなハードルとなっています。
硝子体手術のメリット
- 「完治」を目指した治療です
- 手術は点眼麻酔で行うので、ほとんど痛みはありません。
- 1回あたりの所要時間は15~20分程度です。
- 多くの場合、日帰り手術で行えます。
硝子体手術のデメリット
- 難易度の高い手術ですので、手術を行える医師の数が極めて少ないのが現状です。
- 手術の影響で白内障が進行する可能性があるため、若年の方には不向きです。
- 内眼手術のため、出血や感染症、網膜剥離などのリスクがゼロではありません。
- 自費診療のため、費用が高額になります。